医師のストレス

ストレスとは元々は物理学用語で、外部からの圧力によって物体がゆがんだ状態を指します。

本来、人はストレスを感じると、変調をきたした状態を正常に戻そうとする機能(=ホメオスタシス)が働きますが、ストレスが強過ぎたり、ストレスに長くさらされ過ぎたりすると、ホメオスタシスが働かなくなってしまいます。そして胃が痛い…、便秘になる…、体重が落ちる…、と体に様々な変調をきたします。場合によっては重い心の病やうつ病に発展することもあります。

医師のストレスには様々なものがありますが特に「過重労働」「患者さんからのクレーム」「診療・処方の矛盾」などが挙げられます。

過重労働については、医師の労働時間・労働環境から心身を疲弊させるに値する過酷さがうかがえます。医師には通常の勤務に加えて当直やオンコールといった勤務体系があります。入院施設を備える病院では、法律により医師の常駐を義務付けられていることはもとより、患者さんの急変、緊急手術や分娩に医師の存在は不可欠です。しかしながら通常業務と変わらない負担の多い当直、病院を離れても拘束状態にあるオンコール体制であるにもかかわらず、医師には36時間、48時間の連続勤務が課され、完全交代制、心身ともに充分な休息が得られる労働環境にないのが実情です。そのため過労・極度の睡眠不足から慢性的な疲労はもちろん、そうしたストレスが心の負担となってうつ病、うつ状態にある医師が少なくないと言われています。

また病気、健康、体の働きというものは大きな個人差があり、マニュアルや杓子定規で測り知れるものではないのが実際のところです。人体と生命のプロフェッショナルである医師でさえも、例えば手術では実際に行って見なければわからない、また時に人の生命は医師たちの予測をはるかに超える生命力を発揮することもあるのです。しかしながら近年は人々の権利意識の高まりと、最新の医療や新薬はどんな病気でも治せると思っている人も多く、診療や医療行為に対する患者さんからの不当なクレームやトラブルが自己防衛による医療の質の低下、心の負担やストレスとなって医師を追い詰める事態を招くことも起きています。

さらに治療法が最善の方策を考え抜いた上での結果であったとしても、自分のくだした診療・処方が患者さんを死に至らしめたのではないか…、と自責の念に葛藤、悩み、ストレスとなって医師としての自信を失っていくケースもあります。

医師のストレスは判断力や集中力といった能力を低下させ、絶対にあってはならない誤診、医療ミス、取り返しのつかない医療事故へと発展してしまうリスクがあります。さらに自分自身を追い詰め、重い心身症から離職、過労死、自殺という最悪のシナリオもありうることから医師のストレスは軽視することができません。

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